第2回 奪われないもの
幸せとは何でしょうか。
幸福についての大規模な研究では、健康、人とのつながり、仕事、生きがい、経済的な安定などが大切だとされています。それは確かにその通りなのでしょう。しかし診療を続けていると、幸せはそれほど単純なものではないように思えてきます。
若い頃の私は、お金があれば多くの問題は解決すると考えていました。しかし年齢を重ねるにつれ、健康のありがたさを知り、人との縁の大切さを知り、何気ない日常に心が安らぐようになりました。
同じ病気を抱えていても穏やかに暮らしている人がいます。一方で、何不自由なく見える生活の中で苦しんでいる人もいます。幸せの材料には共通点があるのかもしれません。しかし、その形は一人ひとり異なるのでしょう。
幸せとは何かを考えていると、私はヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を思い出します。強制収容所という極限の状況の中で、彼は人間からあらゆるものを奪うことはできても、自らの態度を選ぶ最後の自由だけは奪えないと記しました。
その言葉が、なぜか私の心に残っています。
幸せに正解はありません。お金に幸せを見出す人もいれば、人とのつながりに幸せを感じる人もいます。健康を何より大切に思う人もいるでしょう。
ただ、自分にとって何が幸せなのかを問い続けること。そして、どのような状況の中でも自分の心のあり方を選び続けること。
それこそが、誰にも奪われない人生の豊かさなのかもしれません。
